肥満症の承認薬とは?
ウゴービ・ゼップバウンドの肥満症における適応条件と注意点
「肥満症」に承認された薬は、誰でも使える痩せ薬ではありません。
承認上の適応条件・保険診療の要件・美容目的の減量との違いを整理しました。
ウゴービやゼップバウンドは、一定の条件を満たす肥満症に対して国内で承認された医療用医薬品です。 ただし、肥満症と診断された人なら誰でも対象になるわけではなく、 BMI、肥満に関連する健康障害、食事療法・運動療法の実施状況など、承認上の条件があります。 また、承認上の適応条件と、健康保険を使って治療を受けるための要件は異なります。 美容目的の減量と、医学的な疾患である肥満症の治療は同じではありません。
- ✅ 「肥満」と「肥満症」は医学的に別のもの
- ✅ ウゴービ・ゼップバウンドの肥満症の適応にはBMI+健康障害などの条件がある
- ✅ 承認上の適応条件と、保険診療で求められる要件は別もの
- ✅ 条件を満たさない美容目的の使用は、承認された使い方ではない
💡 2026年の効能追加について
2026年7月時点で、ウゴービには肥満症に加えて代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)(2026年6月追加)、 ゼップバウンドには肥満症に加えて中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(2026年5月追加)の承認適応があります。 本記事では、このうち肥満症に対する使用を中心に解説します。
厚生労働省・PMDAの公開情報(最適使用推進ガイドライン等)をもとにMEDIORA編集部が作成しています。 診断や治療の代わりとなる情報ではありません。
「肥満」と「肥満症」は違う
日本では一般に、BMI25以上を「肥満」と判定します。 肥満は体格の状態を示す判定であり、BMI25以上であることだけで、直ちに薬物治療が必要になるわけではありません。
一方、肥満に起因・関連する健康障害(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など)がある場合や、 内臓脂肪の蓄積などから医学的に減量が必要と判断される場合には、「肥満症」という疾患として診断されます。
肥満症の治療薬として承認された薬は、この「疾患としての肥満症」を対象としています。 「もう少し細くなりたい」という美容目的の減量は、肥満症治療の対象ではありません。
国内で肥満症に承認されている主な薬
2026年7月時点で、肥満症治療薬として国内で承認されている主な医療用医薬品は次のとおりです。
| 製品名 | 有効成分 | 投与方法 | 国内の状況 |
|---|---|---|---|
| ウゴービ | セマグルチド(GLP-1受容体作動薬) | 週1回の皮下注射 | 肥満症:2023年3月承認、2024年2月発売。 2026年6月に代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH。肝硬変を伴わず、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る)の効能を追加 |
| ゼップバウンド | チルゼパチド(GIP/GLP-1受容体作動薬) | 週1回の皮下注射 | 肥満症:2024年12月承認、2025年4月発売。 2026年5月に中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の効能を追加 |
| サノレックス | マジンドール(食欲抑制薬) | 内服 | 食事療法・運動療法の効果が不十分な高度肥満症(BMI35以上)が対象。依存性などへの注意が必要で、投与期間も原則として短期間に限られる。ウゴービやゼップバウンドとは作用機序や使用条件が異なる |
※2026年7月16日時点の公開情報にもとづきます。このほか、内臓脂肪の減少を目的とする要指導医薬品(市販薬)のオルリスタット製剤がありますが、 購入対象者や腹囲、生活習慣改善の実施状況などに条件があり、薬剤師による確認が必要です。医療用の肥満症治療薬とは承認内容や使用条件が異なります。
💊 マンジャロ・リベルサスとの関係
リベルサスとウゴービはいずれもセマグルチドを、マンジャロとゼップバウンドはいずれもチルゼパチドを有効成分としますが、 剤形、用量、販売名、承認された効能・効果は製品ごとに異なります。 リベルサスとマンジャロの国内承認適応は2型糖尿病であり、肥満症ではありません。 同じ有効成分だからといって、製品を相互に置き換えたり、同じ用量で使用したりすることはできません。
肥満症における承認上の適応条件
ウゴービ・ゼップバウンドは、肥満症であれば誰でも使えるわけではありません。 肥満症に対する承認上の対象は、次のすべてを満たす人です。
- 高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有している
- 食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られていない
- そのうえで、次のいずれかに該当する - BMIが27以上で、肥満に関連する健康障害を2つ以上有する - BMIが35以上
「健康障害が2つ以上」はBMI27以上の場合の条件で、BMI35以上の場合はこの限りではありません。 いずれにしても、BMIが基準未満の人や、対象となる健康障害のない人は、承認された対象に含まれません。 対象となる健康障害の範囲は製品や添付文書の改訂時期により異なる場合があるため、 適応にあてはまるかどうかの判断は医師が最新の情報にもとづいて行います。
承認条件と保険診療の要件は別もの
承認上の適応条件(その薬を使ってよい対象)と、健康保険を使って治療を受けるための要件は同じではありません。 承認された対象に該当していても、医療機関の施設要件や治療歴など、保険診療上の条件を満たさない場合があります。 反対に、自由診療で処方されるからといって、承認上の対象条件がなくなるわけでもありません。
ウゴービ・ゼップバウンドには、それぞれ厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」が定められており、 保険診療として処方を受けるには、患者側の条件に加えて医師・医療機関側の要件も満たす必要があります。
🏥 保険診療で求められる主な要件(ウゴービの例)
- 関連学会の教育研修施設であることや、肥満症、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの診療経験を有する医師が配置されていることなど、医師と施設に関する要件
- 管理栄養士による継続的な栄養指導を実施できる体制
- 投与開始前に、一定期間(6か月以上)、適切な食事療法・運動療法および管理栄養士による栄養指導を行っても十分な効果が得られなかったことを、診療記録等で確認できること
- 高血圧、脂質異常症または2型糖尿病に対して、必要な治療が適切に行われていること
また、ウゴービを肥満症に対して保険診療で使用する場合、保険適用上の留意事項では 投与期間を最大68週間とすることが求められています。 これは日本人を対象とした臨床試験で68週間を超える使用経験がないことによる保険診療上の運用であり、 電子添文(添付文書)における一律の投与禁止期間とは区別して理解する必要があります。 自由診療であれば長期間使っても安全が保証されている、という意味ではありません。
ゼップバウンドにも肥満症に関する最適使用推進ガイドライン(2025年3月作成、2026年5月改訂)があり、 患者要件、医師・施設要件、食事療法・運動療法、栄養指導、投与継続の判断などが定められています。 細部はウゴービと完全に同一とは限らないため、それぞれの最新のガイドラインを確認する必要があります。
これらの要件を満たす医療機関は限られており、大学病院や肥満症治療の専門的な体制を持つ医療機関などが中心です。 受診を検討する場合は、その医療機関で保険診療の処方が可能かを事前に確認しましょう。
美容目的の「減量」と肥満症治療は同じではない
自由診療のクリニックでウゴービやゼップバウンドを扱っている場合でも、 薬として承認された適応(対象となる患者の条件)は変わりません。
肥満症などの承認された対象にあてはまらない人が、美容・痩身目的でこれらの薬を使用することは、 承認された使い方ではありません。美容目的での使用は、国の承認審査を経ていない使い方です。 厚生労働省は、GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬について、 承認された効能・効果、用法・用量に従って適正に使用するよう注意喚起しています。
承認は、条件を満たす患者への使用について有効性と安全性が審査されたという意味です。 「承認薬だから安心」という言葉が、承認条件の外での使用の安全性まで保証するものではありません。
承認薬にも副作用がある
ウゴービ(GLP-1受容体作動薬)・ゼップバウンド(GIP/GLP-1受容体作動薬)は、 承認された使い方であっても副作用は起こりえます。
🩺 主な副作用の例
- 吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満などの胃腸症状(特に開始時・増量時)
- 低血糖(特にインスリン製剤や一部の糖尿病治療薬との併用時)
- 急性膵炎(嘔吐を伴う持続的で激しい腹痛)
- 胆石症、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸などの胆のう・胆道系の障害
- イレウス(腸閉塞)
- 嘔吐や下痢が続くことによる脱水、それに伴う急性腎障害
※製品によって副作用の種類や頻度は異なります。
体調に変化があった場合は、自己判断で用量を変更したり、無理に使用を続けたりせず、処方した医療機関に相談してください。 持続する激しい腹痛、繰り返す嘔吐、強い腹部膨満など、重大な副作用が疑われる症状がある場合は、 使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
また、これらの薬では胃内容物の排出が遅れることがあり、全身麻酔や深い鎮静を伴う手術・検査の際の誤嚥が報告されています。 手術や内視鏡検査などの予定がある場合は、ウゴービやゼップバウンドを使用していることを、 事前に医師、歯科医師、麻酔担当者へ伝えてください。休薬の要否は自己判断せず、医療機関の指示に従ってください。
検討する前のチェックリスト
肥満症治療薬を検討する場合は、次の点を確認しましょう。
- 自分が肥満症の診断基準・承認上の適応条件にあてはまるか、医師に確認した
- 現在使用している糖尿病治療薬や、同じ作用を持つ薬との重複がないか確認した
- 妊娠中、妊娠予定、授乳中ではないことを確認した(該当する場合は必ず医師に伝える)
- 膵炎、胆石症、重い胃腸障害、イレウスなどの既往を医師に伝えた
- 手術や深い鎮静を伴う検査の予定がないか確認した
- 保険診療か自由診療か、診察・検査を含む総費用と、体調不良時・中止時の対応を確認した
- 食事療法・運動療法とあわせて治療する前提を理解した
- 個人輸入や個人間売買ではなく、医療機関での処方であることを確認した
よくある質問
BMIが25くらいでも処方してもらえますか?
肥満症における承認上の対象は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、 食事療法・運動療法で効果不十分で、BMI27以上かつ肥満に関連する健康障害が2つ以上ある場合、 またはBMI35以上の場合です。BMI25程度で対象となる健康障害がない場合は承認された対象に含まれず、 美容目的での使用は承認された使い方ではありません。
ウゴービはどこの病院でももらえますか?
保険診療で受けるには、関連学会の教育研修施設であることや、専門的な診療経験のある医師・管理栄養士の配置など、 医師と施設に関する要件があり、対象となる医療機関は限られています。 また処方前に一定期間の食事療法・運動療法と栄養指導を行っていることなどの条件もあります。 受診前に、その医療機関で保険診療の処方が可能かを確認してください。
マンジャロとゼップバウンドは何が違うのですか?
有効成分は同じチルゼパチドですが、承認された効能・効果が異なる別の製品です。 マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは条件を満たす肥満症(2026年5月からは中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群も)を対象としています。 同じ成分でも製品を相互に置き換えることはできません。詳しくは マンジャロの基礎知識記事 をご覧ください。
薬を使えば食事制限はいらないですか?
いいえ。肥満症治療薬は、食事療法・運動療法を行ったうえで効果が不十分な場合に上乗せする位置づけです。 保険診療では、治療中も管理栄養士による栄養指導などの継続が前提になっています。
まとめ
ウゴービ・ゼップバウンドは、一定の条件を満たす肥満症に対して国内承認された治療薬です (2026年にはウゴービにMASH、ゼップバウンドに中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の効能も追加されています)。 肥満症で対象となるのは、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、 食事療法・運動療法で効果が不十分で、BMIと健康障害の基準を満たす人に限られます。
さらに、承認上の適応条件と保険診療の要件は別もので、保険で受けるには医師・施設要件などのハードルがあります。 「痩せたい人が気軽に使える薬」ではありません。 美容目的の減量と肥満症治療は別のものであることを理解したうえで、 自分が対象にあてはまるのかどうかを医師に相談することから始めてください。
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の治療や医薬品の使用を推奨するものではありません。 医師による診断・治療・処方に代わるものではなく、効果・副作用には個人差があります。 掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに作成しています。 最新情報はPMDA、厚生労働省および各医療機関の公式情報をご確認ください。
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(販売名:ウゴービ皮下注)」(令和7年5月改訂)
- PMDA 最適使用推進ガイドライン一覧
- 厚生労働省 保険適用上の留意事項通知(ウゴービ皮下注)
- 厚生労働省「医薬品・医療機器等安全性情報 No.406」(GLP-1/GIP・GLP-1受容体作動薬の適正使用)
- ノボ ノルディスク ファーマ「ウゴービ皮下注、MASHに対する承認取得」(2026年6月19日)
- 日本イーライリリー「ゼップバウンド 中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群 効能又は効果追加のお知らせ」
- 田辺ファーマ ニュースリリース(ゼップバウンド薬価収載・発売)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。特定の診断・治療・医療機関の利用を保証または強制するものではありません。